このページでは、建築物のデジタルアーカイブ化に関する研究で作成している、整合性検証用のスケール模型の作成過程について紹介しています。下に行くほと新しいものとなっています。
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側柱はホゾ穴が多く、そのままでは切削できないので、1のように分割して切削して積み上げていきます。積み上げたものを2のように礎石の模型の上に設置していきます。いよいろ組み上げのスタートです。
三手先部分は部品が多くて大変です。でも大斗に肘木が乗って、、、、と組み上げていく随分伝統的建築物らしさが出てきます。3は隅の部分の大斗と肘木です。4は、四点柱の上部です。この部分は来迎大斗や肘木があったりで入り組んだところが多く、かなり分割してから切削しています。一手目の肘木が乗った状態が5の写真です。
三手先に使われるマス部材は、たくさんならべたものをシートにして切削します。6が、荒削りを終えたもの、7が荒削りあとに仕上げ切削をしたものです。このように両面から切削すると8のようなシートができます。これを9のように糸ノコで切ってから余分なところをやすりで削っています。
三手先ができ始めると1/15スケールですが迫力がありますね。10が平の三手先部分で、11が隅の三手先部分です。横から通して見たものが12です。隅の部分は切削できない形がいくつかあります。四手掛けの肘木は13のように分割して切削しました。斜めに切りかかれているところにそって分割しています。
いよいと屋根部も佳境です。このあたりは斜めにカットする必要のある部材が多く、部品分割も複雑になります。14、15が尾垂木です。尾垂木は上の層の四天柱に刺さった後、ぬけないように栓で固定されます。16、17は丸桁近傍です。丸桁は上に地垂木がのるので、位置合わせ用に溝が掘ってあります。地垂木は茅負の曲線なりに高さが変わっていくので、丸桁もそれに合わせて成増ししています。写真ではわかりずらいですが、脇(16でいうと右側)に行くほど成が増しています。
木負、茅負、垂木をのせると屋根の雰囲気が出てきます。いずれの部品も反りがあるため切削するが難しいのですが、NCレベルのモデルやサポート枠を工夫して切削しています。ただ、垂木に関しては、一部、連結させるかたちで切削しています。1/15スケールとはいえ細かい部品やその納まりはなかなか模型化が難しいですね。とはいえ、見上げになるよう写真をとると反り屋根らしい迫力がでてくるかと思います。いかがでしょうか?
屋根一面分の木負、茅負、垂木を組み上げました。垂木の数が多くて大変でしたが張り出す軒の印象は1/15ながらなかなか立派なものですね。木負、茅負と垂木の納まり部分は部品が細いため、NCルータで切削していても誤差がでやすく、苦労しました。写真では分かりづらいかと思いますが少し歪みが出てしまっています。母屋、野垂木を載せれば上から押えられるのできれいになると考えています。
先日導入した三次元プリンタ(詳しくは過去の記事へどうぞ)で、五重塔五層目の模型化を始めました。なぜ二~四層目を飛ばして五層目なのかというと、本研究で題材としている法華経寺五重塔は五層目のみ扇垂木になっており、一~四層目の方垂木に比べ複雑な構成だからです。最も難しそうな箇所に挑んでみようと考えたわけです。とはいってもいきなり屋根部から始めるわけには行きませんので、五層目の軸部(柱盤)から出力を行なっています(左図)。また、三次元プリンタでは比較的自由な造形が可能なので、継手仕口も伝統的な設計に近い状況での模型化を試みています。例えば下貫の継手には略鎌継ぎが用いられることが多いのですが、模型上でも右図のように略鎌継ぎの形状を表現しています。
軸部、三手先部と組み上げていく様子です。今回は五層目の柱盤から上を作成していますが、五層目の四天柱は柱盤より下方向に伸び四層目の枠肘木に取り付くため、スタイロフォーム(水色)で下駄を履かせています(23)。軸部ができたら大斗を置き、一手目、二手目と組み上げていきます(24、25、26)。27は出力された部品の様子です。このようにベース(黒い板)に貼り付くような形で部品が造形されますので、ペリペリと剥がして使います。
三手先部を終え、丸桁、地垂木、桔木(下)が入った様子です。実物の五重塔では、桔木に野物が使われているため、三次元モデルでも野物の自然な曲線を表現できるように努めています。桔木(下)の下にある斜めの材は尾垂木です。尾垂木は四天柱に刺さるように納まりますが、この部分に入り込んだサポート材(三次元プリンタでの出力の際、ハング、浮いた部分を支えるために形成される補助材)を除去するのに結構苦労しました。
地垂木と桔木(下)が入った状態(32)、木負、飛檐垂木、茅負が入った状態(33、34、35)です。初重の垂木の入り方とは異なり、垂木が放射状に広がっているのがわかりますでしょうか。また、隅木ですが、材のサイズが大きく三次元プリンタの加工可能範囲を超えてしまいました。単に切断して加工し、接着剤で付けるのも味気ないので、本来はこのように継ぐものではないのですが金輪継ぎにて継いでいます。継手全体の長さは2センチほどですが、ちゃんと継手として機能しています。
36は二面分の垂木、茅負までの入れた状態です。見上げると随分五層目らしい雰囲気がでています。37、38は桔木(上)を入れた状態です。屋根部特有の斜め材が密に入った様子がわかると思います。桔木(上)は端部で四天柱、茅負、中頃で出軒と納まり、出軒を支点とした天秤となって軒が下がるのを防ぐ役割を果たす材です。スケール模型上でも桔木が入ることで軒が持ち上がり、垂木、茅負による曲面が正されるのを感じました。39、40は桔木の上に小屋束、母屋が乗る様子です。この母屋のラインがおおよそ屋根面のラインになるので、母屋が入ると模型全体のシルエットも見慣れた五重塔のシルエットに近くなってきます。
ずいぶん間が空いてしまいましたが、五重塔の五層目、42、43のように出来上がっています。下からライトアップしていますが、密に部品が組まれている様子が見えて、なかなかいい雰囲気の模型になってると思います。41は諸事情で一部を組み上げ直したときに部品を並べてみた様子です。基本的にほとんどの部品は納まっているだけなので分解できるようになっています。研究室の玄関ホールに他の模型(2x4工法の住宅、セキスイハイムM1)と一緒に常設展示していますので、ご覧になりたい場合は連絡ください。
http://www.hlab-arch.jp/staticpages/index.php/20120628232132985