アルゴリズミック・デザイン

アルゴリズムを用いた建築設計についての研究

2012/7/7更新
1.はじめに
2.アルゴリズムについて
3.設計例
4.ギャラリー

1.はじめに

これまで不可能とされてきた複雑な形態が、近年の建築・コンピュータ双方の技術の発達によって現実の建物のデザインとして採用されるようになってきました。本研究室でも、コンピュータを用いた建築設計の手法として、アルゴリズムを用いた設計の研究を行っています。

このページでは、本研究室に所属する学生の成果物の紹介を中心として、建築におけるアルゴリズミック・デザインの応用について検討していきます。

2.アルゴリズムについて

アルゴリズムというのは、「ある目的を遂行するための記述された手順」といった表現がなされるもので、特定の形で表されるものではなく、日常のありふれたことからコンピュータ内での計算まであらゆるものにアルゴリズムが存在します。例えば、電車をどのように乗り継げば目的地まで出来る限り早くたどり着けるか、というのもその内の一つと言えます。近年では、アルゴリズムを用いて建築設計を行う手法の研究が徐々に広まってきています。事例などはこちらで紹介しています。

本項目では本研究室で特によく用いられているアルゴリズムを紹介します。

・DLA(Diffusion-Limited Aggregation)
 基点となる粒子を空間上に配置し、その粒子に向かって遠方からランダムウォークをしながら近づいてくる粒子を付着させることで凝集体を成長させていくアルゴリズムです。平面でDLA凝集体を発生させると下図のような形態を生成します。凝集体が生成されていく様子のアニメーションはこちらです。

凝集体の成長手順 平面状で発生させたDLA凝集体

・fDLA(fake Diffusion-Limited Aggregation)
 こちらはDLAをベースに建築の形態生成に応用しやすく本研究室で改良したアルゴリズムで、研究室内ではfDLAと呼ばれています。ベースとなったDLAでは、凝集体の枝の成長が粒子の移動を妨げることがあり、成長した枝ほど粒子が付きやすくなってしまい、粗密間のコントロールが難しいという問題点があったので、新しく付着させる粒子をランダムウォークさせるのではなく、ランダムな位置に粒子を発生させ、これまでに生成された凝集体との付着域判定を行うことで凝集体を成長させます。fDLAで凝集体が生成されていく様子のアニメーションはこちらです。

凝集体の成長手順 平面状で発生させたfDLA凝集体

・セルオートマトン(Celluler Automaton)
 セルオートマトンとは、格子状のセルと単純な規則からなる、離散的計算モデルのことです。非常に単純化されたモデルではありますが、与えられた規則から得られる結果はとても豊かで、特に複雑な自然現象を模したモデルの生成ではよく用いられるアルゴリズムの一つだと言えます。今のところ研究室では2次元のセルオートマトンで有名なライフゲームを用いた形態生成の手法の研究がよくなされています。ライフゲームのアニメーションはこちらです。

・L-system(Lindenmayer system)
 L-systemとは形式文法の一種で、植物の成長プロセスや様々な自然物の構造を記述、表現することができるアルゴリズムです。与えられた文字列とその文字列の置換規則を用いて再帰的な計算をすることで、単純な置換規則から非常に複雑な結果を得ることができます。下図の樹木はL-systemを用いて得られた文字列に、文字ごとの描画のルールを設定することで表現した樹木です。

L-systemの再帰的処理の例 L-systemを用いた樹木の生成例
 以上のようなアルゴリズムのほか、それぞれの設計独自のアルゴリズムもありますが、本項目での説明は省きます。今後は、遺伝的アルゴリズムの導入なども行っていく予定です。
 また、本研究では、主にC/C++言語を用いてプログラミングを行い、アルゴリズムの計算を行っています。形態生成に必要な幾何情報はそのプログラム上で算出され、3次元CADであるArchiCADに実装されているオブジェクト記述言語のGDLスクリプトにC/C++言語で作成したプログラムから出力することでCADのオブジェクトとして実際に描画しています。

3.設計例

用いたアルゴリズムごとに分けて、本研究室の学生の設計例の紹介をします。
・DLA,fDLAを用いた設計例
・セル・オートマトンを用いた設計例
・L-systemを用いた設計例
・独自のアルゴリズムを用いた設計例


・DLA,fDLAを用いた設計例

設計例1:Skyscraper after Skyscraper(evolo2010応募作品)
Skyscraper after Skyscraper fig.1 Skyscraper after Skyscraper fig.2 Skyscraper after Skyscraper fig.3
 既存の複数の躯体をベースに、結合、拡張、ユニットの再配置を行っています。ユニットの配置はそれぞれのビルのコアを凝集点にfDLAを用いて密度やコアからのつながりを考慮して配置し、また、それぞれのユニットが別個にIDを持ち時間の経過と共にその配置が変化するようにしました。

設計例2:reconstruction(2008年度卒業設計)
reconstruction fig.1 reconstruction fig.2 reconstruction fig.3
 住居、オフィス、店舗、階段、通路などのユニットに付着の相性や、発生ユニットの割合などを設定し、このユニットを粒子としてfDLAで凝集体を生成することにより、設計者の設計意図を反映させることを試みました。本設計では、ユニットは敷地にもともと街区の中に存在した住居など、それぞれの割合を元にしました。また、敷地に存在する街区、道路の情報を用いた接触判定を行うことで、凝集体の概形が単純なランダムで生成されたものでなく敷地にあったものになるように制御しています。

設計例3:郊外へのリロケーションによる“美と健康” の街づくり(「活きる木/生きる地」展出展作品)
tekuto fig.1 tekuto fig.2
 こちらの設計例では敷地に対してどのように建築物などを配置するかという部分のアルゴリズムを本研究室が作成しました。ここで作成したアルゴリズムは、新しい形態を生成するという目的ではなく、諸条件の最適化のためのものです。簡易レイトレーシングによる日照計算などをアルゴリズムに組み込み、日照条件を正確に設定された畑と、33棟の民家の最適な配置をfDLAを用いて決定しました。詳しくはこちらをご覧下さい。

・セルオートマトンを用いた設計例

設計例1:THE LIVING CELL(evolo2010応募作品)
THE LIVING CELL fig.1 THE LIVING CELL fig.2 THE LIVING CELL fig.3
 通常の格子状のセルではなくボロノイ図で描かれた多角形をセルとし、ボロノイ図の核となる点を世代ごとに移動させ、積み上げました。セルオートマトンのルールとしては、四角形に限定しない多角形でのライフゲームを独自に考案し、過疎・過密のコントロールに用いました。生存状態が続くほどセルはボロノイ図で描かれたフレーム内を満たすように成長し、逆に死亡状態が続くほど退化していくように設定しています。また、過疎・過密により死んだセルは緑化スペースとなり、適度な間隔が保たれるような設計としました。

設計例2:cell building(2009年度授業課題)
cell building fig.1
 こちらは通常の格子状のセルでライフゲームを行い、それを世代ごとに積み上げました。単純なライフゲームのルールからでもこれほど変化に富んだボリュームが形成されることに驚かされます。

・L-systemを用いた設計例

設計例1:bonsai(evolo2009応募作品)
bonsai fig.1 bonsai fig.2
 本設計はL-systemで再帰するにつれ、枝が地上に向かって伸びていくこととしたため、予め周辺の建築物の情報をプログラムに取り込み、成長する枝との衝突判定を行うことで周辺の建築物との衝突を避けました。また、再帰数ごとの枝の調整を行い、L-systemで生成される形態が地上との接点をより多く持つような調整をしました。

設計例2:kids passage(2008年度卒業設計)
kids passage fig.1 kids passage fig.2 kids passage fig.3
 L-systemで生成された葉の葉脈のような形態が特徴的な船着場の設計です。L-systemで得られた文字列を筒状の通路で表現されているのですが、その節となっている部分のつなぎ目も綺麗に埋まっています。

・独自のアルゴリズムを用いた設計例

設計例1:Alive(evolo2010応募作品)
Alive fig.1 Alive fig.2
 予め複数のコアからなる建物を定義し、その各コアがバイオリズムを持つものと仮定しておきます。コアが自身と他者のバイオリズムの関係を意識し影響を受けつつ、自身の形態を変えながら、地上から各々が定められた高さまで成長していくことで形態を生成しています。

設計例2:Division&City Maker(第32回情報・システム・利用・技術シンポジウム)
Division&City Maker fig.1 Division&City Maker fig.2 Division&City Maker fig.3
 一定の領域をある条件に従って分割し続けることで、街区を設定し、さらにその街区情報から建物の配置を行い、街並みの形態を生成させています。

設計例3:Space Elevator City(第2回宇宙エレベーターアイデアコンテスト最優秀賞)
Space Elevator City fig.1
 詳しくはこちらをご覧下さい。

設計例4:INFILIFT(FUTURE DESIGN 2009 未来エレベーターコンテスト応募作品)
INFILIFT fig.1 INFILIFT fig.2 INFILIFT fig.3
 INFILL+LIFT=INFILLIFTは東芝主催の未来エレベーターコンテストに応募した作品です。全体を支える構造部材及び各種インフラが一体となった骨格と自走性エレベーターによる空間ユニットから構成されており、その配置はアルゴリズムにより変化し、生命を維持するように都市の成長と代謝に柔軟に対応します。


4.ギャラリー

ここには、完成したプレゼンテーションボードや、スタディ中に得られた画像などを随時載せていきます。

THE LIVING CELL(evolo2010応募作品)プレゼンテーションボード
THE LIVING CELL fig.1 THE LIVING CELL fig.2

Skyscraper after Skyscraper(evolo2010応募作品)プレゼンテーションボード
Skescraper after Skyscraper fig.1 Skescraper after Skyscraper fig.2

Historical Conotation(arquitectum TOKYO 2010 Fashion Museum応募作品)プレゼンテーションボード
Historical Conotation

3°(2009年度卒業設計作品 )プレゼンテーションボード
ad_sostusei2010_1 ad_sostusei2010_2 ad_sostusei2010_3

The screen and the slabs as interface(arquitectum BALI 2010 Marine Research Center応募作品)プレゼンテーションボード
Honorable Mention受賞
The screen and the slabs as interface

predictive integrity(arquitectum Seaside 2010 A House between the Sea and the Country応募作品)プレゼンテーションボード
Honorable Mention受賞
predictive integrity

the epitome of Roma(arquitectum ROME 2010 Vertical SPA facing the colosseum応募作品)プレゼンテーションボード
Honorable Mention受賞
The epitome of Roma

Genius Loci(arquitectum CHILE 2010 Wine's Museum応募作品)プレゼンテーションボード
Genius Loci

6 Unit * 2 way approach = 10 patterns residence for cooperative(第4回『長谷工 住まいのデザインコンペティション』「10違うものが集まる100戸の集合住宅」 応募作品)プレゼンテーションボード
Genius Loci

Honarble Escape to Seaward(evolo2012応募作品)プレゼンテーションボード

HORIZONTAL TOWER(evolo2012応募作品)プレゼンテーションボード

AC-CA Singlity, but normal. (Architectural Competition ,Concours d’Architecture Buenos Aires New Contemporary Art Museum 応募作品)プレゼンテーションボード



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