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2016年度博士論文の公聴会が行なわれました

  • 2017年2月23日(木) 17:54 JST
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    ゲストユーザ

博士後期課程の学生の博士論文の公聴会が行なわれました。「多関節ロボットによる多様な形状の木質建築部品加工に関する研究」と題して発表した論文の内容について、簡単に紹介します。



近年の木造建築分野では、機械加工によって部品を制作することが盛んになりつつあります。この代表例としてはプレカットが挙げられ、最近ではCNC工作機械や多関節ロボット(以下、ロボットとします)を用いた取り組みも見られますが、多くの場合で加工方法や設計/生産システムに起因して加工可能な形状が限られています。
 ロボットは柔軟で汎用性のある動きを可能としており、人間の腕のように動くことができます。ロボットの持つ能力を十分に活用すれば、従来の工作機械では実現されてこなかった、例えば手加工と同等な、もしくはそれ以上の加工が可能になると考えられます。このような建築部品加工が実現すれば、コンピューテーショナルデザインのような建築の一般化のみならず、職人減少といった現在の建築生産が抱える問題解決の端緒にもなるでしょう。
 この研究では、ロボットを応用した木造建築の部品加工を目的に、これによって多様な形状を加工する方法についての提案及び試行を行ない、多様な形状の部品加工として以下の3つのサブテーマについて扱いました。


  (A) 日本の伝統的な継手仕口など、手加工によってのみ成立している形状の加工
  (B) 特定のデザイン/設計手法に従属しないシステムの構築
  (C) ロボットの特長を活かした部品加工

サブテーマの(A)と(B)に関しては、ロボットに持たせる工具や、加工の動作を導出するCAMやシミュレータなどのから成るロボット部品加工システムの開発について取り組みました。既に当サイトやオープンラボ、外部の展示会でも紹介しました五重塔の屋根隅部の模型は、開発したシステムを用いて制作しており、ここでの部品の加工を通してシステムの検証を行ないました。サブテーマの(C)については、墨付けや治具が不要であるというロボットの特長を活かした加工によりもたらされる効果や、コンピュータビジョンを応用したワーク計測についての試行について取り組みました。過去に紹介した正二十面体や螺旋階段の手摺りなどの加工は、ここでの試行の一環です。
 これらの取り組みを通して、工具を備えたロボットをコンピュータ制御によって適切に動作させることで、多様な形状に対して手加工と同等以上の加工がロボットによって可能であること示し、ロボットによる部品加工の可能性を実証できたのではないかと考えています。
 引き続き当研究室では、実物大スケールの建築部品の制作など、ロボットを活用した木造建築の部品加工に取り組んでいく予定です。

image 五重塔模型の部品加工(角ノミ)

image ロボットで加工した五重塔模型の部品
image 正二十面体のツールパスとシミュレーション

image 正二十面体の加工
image 螺旋階段の手摺りの加工

image 制作した手摺りを取り付けた螺旋階段