2018年4月26日(木) 05:25 JST

スクリプティングによる造形教育の試行

  • 2014年12月24日(水) 00:00 JST
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もしかしたら今年最後の記事になるかもしれません。論文シーズンまでまだ間があります。二回続けて建築構法教育の教材研究についてでしたが、今回は普遍の学生向けにこの春実施した講義の様子をご紹介します。

千葉大学では教養課程のことを普遍課程と呼んでいます。

この講義は工学部の学生が受講できません。つまり、建築の学生はいません。少し残念ですが、そうはいっても、大学に入学して間のないフレッシュな頭脳にこそスクリプティングでの3Dモデリングはふさわしいと考え、それように教科書を準備して臨みました。使用した教科書へのリンクは最後に示します。

上のスナップショットが最優秀作品です。受講生には、優秀作品は3Dプリンタで出力して次年度の講義で紹介後進呈すると約束していました。まだ半年ありますが、年内にケジメをつけておくことにしました。

さて、学生の作品は幾何学的には正しいのですが、これを3Dプリンタで出力して組み合わせ可能にするには「あそび」が必要です。あそびがないと無理して嵌めても弱いところが壊れます。今回も学生の提出作品のまま出力してみましたが、やはりところどころに無理があり、組み立てられませんでした。また、3Dプリンタの素材であるABSはなかなか硬くて、サンドペーパーで削るのもけっこう大変です。作品そのものが複雑な形をしているので、サンダー掛けも現実的ではありません。

そこで、立体パズルとして実用できるように、こちらでアレンジすることにしました。提出作品では、各パーツが互いに面を共有する状態になっています。これを抜本的に見直します。

今回の場合は、ひとつの球体から各パーツを切り出す作業そのものをイメージして、切断箇所となる位置にごく薄い刃物による「きりしろ」をモデリングすることにしました。全部合成すると分かりづらいので1パーツの例を示します。球体から「きりしろ」を引き算(difference)すると、該当パーツが球体から分離されます。下の図では切り取られた断面は赤く色がついていますが、パーツの形は上の図の右端のものと同じなのが判るでしょうか?切断面の向こう側が白く透けていて、パーツが球体から切り出されたのが確認できると思います。

以上を残りの5個のパーツに対して適用すると下図のようになります。下図では「きりしろ」が視認しやすいように刃物厚を大きめに設定してあります。

一つ注意が必要なのは、このままOpenSCADから出力したSTLを用いても、ほとんどの3Dプリンタでおそらくプリントできないことでしょう。6つのパーツがひとつのSTLファイルに同居している状態ですので、これらを個別パーツ毎に分割したSTLファイルを用意します。今回はMeshLabを使って作業しました。

以上の作業を経て出来上がった作品が以下です。球の直径48mmと、比較的小さく出力しましたが、咬み合わせにも無理はなく、パズルとして機能します。3DプリンタによってはXYZ方向別に縮む量が違ったり、解像度の大小、局所的な変形癖、などなど、機種ごとに問題が多様ですので、刃物厚の調整はトライアンドエラーになります。いざ作るとなったときの具体の対処方法は、それこそ工学の問題として興味深く重要なのですが、さすがにそこまでを教養課程の学生に求めるのは無理があります。この作品にはオリジナリティはないのですが、注意深い観察力と正確なモデリング能力を評価しました。講義は来年もありますので、優秀作についてはまたご紹介するつもりです。

なお、本講義に使っている教科書はAmazonのKindle用のみで印刷物はありません。興味のある方は右下のリンクをご覧ください。お正月休みの頭の体操にスクリプティング3Dを始めてみてはいかがでしょうか。良いお年を。

教科書「計算機言語で形を造る」(Amazon Kindle)へ