建築でコンピュータ、する?
2024年9月20日(金) 08:33 JST
2020年度卒業論文の発表会がオンラインにて行われました。本研究室の卒業論文を簡単に紹介したいと思います。
木質部品の加工は一般的に多段階で行われますが、加工済みの形状から加工過程を知ることが難しい場合があります。そこで本研究では、木質部品における加工過程の可視化を目的として、継手仕口を対象に3Dモデル上における加工情報の表現手法を検討しました。
加工情報は加工ツールと加工順序に対応させた色で表現し、3DモデリングツールであるRhinocerosとそのビジュアルプログラミング環境であるGrasshopperを用いて13種類の継手仕口および2種類の加工について生成システムを実装しました。実装したシステムを法起寺三重塔(奈良県)の3Dモデルに適用し、3Dモデル上で加工情報が表現可能であることを確認しました。
近年の情報化社会の進展に伴い、建築分野では文化資源をデジタル化によって保存するデジタルアーカイブという構想が発展しつつあります。本研究ではこのような構想を基として、実在する伝統木造建築のBIM(Building Information Modeling) モデルの作成と、モデルから情報を入手するビジュアライズシステムの構築を行いました。
モデルのビジュアル化は現実空間に仮想の物体を配置・操作できるMR(Mixed Reality、複合現実)上で行い、部材名称や詳細情報の表示、継手・仕口部分の確認といった動作を直感的な操作で実行できるように制作をしました。
近年の設計・企画業務では3DモデルやBIM等を用いた計画検討手法が積極的に取り入れられており、モデリングは業務に必要不可欠な技術になりつつあります。都市の再開発や整備事業においても3Dモデルのニーズは高まっており、三次元でのデザイン検討、印象調査のためのパース作成、景観のシミュレーション等様々な用途を挙げることができます。
しかし、街並み検討用の巨大な3Dモデルを簡単に作成することは難しく、高精度なモデルを作成しようとすればそれぞれの建物調査、敷地の形状など多くの情報をまとめる必要があります。そこで本研究では、手続き型モデリングのアプローチによって具体的な都市計画を仮定した3Dモデリングの作成法および可能性を探りました。
地理情報システムGISのデータから街並みの概形を生成し、プログラミング言語のCGAを用いて詳細部分のモデリングを行うことで、特定の条件を満たした街区の作成をすることができました。
千葉大学では通行者の安全確保のため構内道路を自転車歩行者道に改良し、自転車と歩行者の歩車分離を行っています。今年度は歩車分離の利用実態を把握するため、構内に定点カメラを設置し通行者レーンの違反者数を手作業でカウントすることで違反率の分析が行われました。
このような分析を手作業で行うには多くの手間を要することや、ヒューマンエラーによるカウントミスの影響も少なくないと予想されます。そこで本研究では、このような歩行者などの分析をより効果的に行うことを目的に、Openposeを用いて抽出した関節情報を入力とする深層学習による動作推定手法を提案しました。
推定にあたって「歩く」、「立つ」、「自転車を漕ぐ」、「歩きスマホ」の4つの学習データを作成して、歩行者専用道路の定点カメラ映像を用いて検証を行い、動作推定が可能であることを確認しました。
クレーン揚重工程における吊り荷旋回装置の自動制御を目的とし、小型吊り荷旋回装置の試作とそれを制御するプログラムの作成を行い、それらを用いた実証実験をしました。作成したプログラムでは、装置に組みづけしたエンコーダやカメラなどのセンサから得られた自己位置、自己姿勢により制御を分岐させています。
検証の結果、フライホイールの傾斜角度をモニタリングすることで制御不能角度に達することなく、連続的な装置の自動運用が可能であることと、旋回角の閾値を場合ごとに複数設けることで、閾値前後での不必要な行き来が軽減されうることが確認できました。
プレカットのCADとCAMを分けるフローでは、いまだに人の手によって加工パスを求める必要があります。本研究では、プレカットによる木材加工の合理的なフローの開発を行うために、深層学習を用いて汎用三次元モデルから加工パターンを特定する手法について検討を行いました。
Rhinocerosで元の形状をトレースし、Grasshopperを用いて変形等の処理・書き出しを自動化することで学習データを効率的に生成しています。
学習の結果、生成モデルに対する高精度の識別が確認できたため、今後は実際に現場で使用されているデータに対する識別精度を確認していきたいと考えています。