2020年11月28日(土) 17:21 JST

建築学会大会(関東)参加?の報告

  • 2020年10月23日(金) 11:26 JST
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千葉大学で開催予定であった建築学会大会(関東)、残念ながらコロナ禍の影響で大会は中止となってしまいました。 建築学会各委員会の先生方のご尽力で代替のオンライン発表会が開催され、当研究室からもいくつかの発表を行うことができましたので見ていただいた方もいらっしゃるかもしれませんが、研究室からは以下のタイトルにて計10本の梗概の投稿を行いました。この記事では簡単なビジュアルとともに各研究について紹介したいと思います。

  • Augmented Realityを活用した施工支援システムの開発と音声操作による拡張
  • クレーンでの揚重作業自動化における吊荷旋回装置の自律制御に関する研究 その1、その2
  • 五軸加工機による木造レシプロカル・タワーの制作
  • 機械加工を目的とした丸太の姿勢推定に関する研究 その1、2
  • ロボットを用いた振動ノミによる伝統木造建築の装飾部位加工に関する研究
  • 伝統木造建築の木部材加工を通した、人と機械による協働制作に関する研究
  • 単眼カメラを用いた動作認識に関する基礎的研究
  • 不整形な木材の深層学習を用いた簡易な掃引体表現に関する研究
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Augmented Realityを活用した施工支援システムの開発と音声操作による拡張

近年、BIMを活用した建築施工支援の技術として、可動する重機モデルを用いた三次元での施工シミュレーション手法が提案されています。このようなシミュレーションは三次元CAD上で行うこともできますが、設計や三次元モデル化、図面化のための三次元CADはシミュレーションにはややオーバーです。特に施工現場ではPC環境やそれを操作する技術者などのリソースの問題があります。

そこで、本研究ではAR技術を活用した重機の配置計画検討システムの開発を行いました。物理的に動かすことのできるARマーカーと直感的な操作が可能なUI、操作結果をCADに返す連携機能、そして、音声入力による多人数でのフリーハンド操作技術を組み合わせることで、簡便な施工シミュレーションを実現することができました。


クレーンでの揚重作業自動化における吊荷旋回装置の自律制御に関する研究 その1、その2

近年建設現場における作業従事者の減少や、安全性確保の観点から、ICT を活用した自動化施工の開発が進められています。この自動化施工に関して、当研究室での取り組みの一つに吊荷旋回装置の自動制御システムの作成があります。

本研究では、吊荷旋回装置の自律制御システム構築のため、マーカートラッキングと自然特徴量トラッキングを併用した吊荷旋回装置の自己位置推定手法を開発し、吊荷旋回装置の自動制御を試みました。その1では自然特徴量トラッキングの手法として、ORB、A-KAZE、深層学習による大域特徴量を試験し、高精度GPSとの比較実験を通し深層学習による大域特徴量が有効であることを確かめました。その2では、マーカートラッキングと自然特徴量トラッキングを併用した自己位置推定システムを構築し、これを実装したクレーンの自動制御システムを提案し、実験によりその可用性を検証しました。


五軸加工機による木造レシプロカル・タワーの制作

近年普及が進んでいるパラメトリックデザインやコンピューテーショナルデザインは、設計の幅を広げる一方で加工の難しい部材が多数発生するという問題があり、制作時に用いる加工機には複雑な加工を可能にする性能が求められます。研究室では複雑な加工の実現に向けて、セフルビルドの五軸加工機を使いその機構や制御を継続的に行っています。これまでは加工の速さから丸鋸をメインに扱ってきましたが、丸鋸でできる形には限りがあるので、他のツールも併用してより複雑な加工を行いたいと考えました。

今回の研究では五軸加工機の加工性能をさらに高めるため、Auto Tool Changer搭載のモータ(以下、ATCモータ)を加工機に導入しました。ATCモータは丸鋸やドリルなどのツールを自動的に持ち替えることができるため、従来の性能ではできなかった自由度の高い連続加工が可能となります。

ATCモータ装着の五軸加工機の試験として、29種類、計116部材によって構成されるレシプロカル・タワーの制作を行い、丸鋸での切り落とし加工とドリルでのダボ穴の加工の組み合わせを実践しました。機械制御の利点を活かすことで、人間の手では難しい斜めの切断や正確な穴あけを短時間に高精度で行い、多品種少量な部材からなるデザインを実現することができました。


機械加工を目的とした丸太の姿勢推定に関する研究、その1、2

機械加工を行うためには、ワークとする材の位置姿勢を適切に把握する必要があります。製材のような形状の把握が容易な材ではバイスなどの把持機構で位置決めをすることができますが、丸太のような不整形な材では、その位置姿勢を適切に知ることは困難となり、機械での加工は難しくなってしまいます。

そこで、本研究ではコンピュータビジョンによって丸太の位置姿勢を加工機に適切に教示するシステムの開発を行い、研究室の五軸加工機への組み込みを行いました。具体的には、SfMによる三次元復元により対象となる丸太の三次元点群と特徴量のセットを取得しておき、加工機に設置後、特徴量トラッキングにより、丸太(ワーク)⇔カメラ⇔加工機の座標系を相互に変換することによって位置姿勢推定を行っています。高精度な接触式センサと比較し遜色ない精度で位置姿勢の推定ができていることが確認できました。現在、このシステムを用い丸太から太鼓材(太鼓落としの梁材)のようなものの制作する試験を行っています。


ロボットを用いた振動ノミによる伝統木造建築の装飾部位加工に関する研究

伝統木造建築の木部品の特徴的な加工というと、軸部の継手仕口のほかに木鼻や虹梁の絵様などといった装飾的な部位も挙げられます。装飾部位を機械加工することを考えると、加工形状の自由度が大きいミリング加工が思いつきますが、これでは直線的な入隅部などは加工が困難となります。

そこで本研究では、6軸多関節ロボットと、直線的な入隅部のような部分の加工が可能である振動ノミを用いた加工の手法を考察し、伝統木造建築の装飾部位に対する加工を試行しました。唐草彫りを例に、これを定義する3つの線分から加工パスを生成し、平刃と丸刃の二形状で検証を行いました。結果としてそれぞれの刃に様々な特性や、刃の形状に由来する彫りの模様の違いがあることが確認できました。それらから、それぞれの特性を生かして加工部によってツールを使い分けるといった加工の可能性をみることができました。


伝統木造建築の木部材加工を通した、人と機械による協働制作に関する研究

現在、伝統木造建築の修繕や制作を行う職人が減少していく中、次世代への技術の継承が難しくなってきています。また、伝統木造建築の制作・修繕には時間と費用もかかってしまいます。そこで、伝統木造建築の保全を可能にする方法として、人と機械の協働制作の在り方に関して整理、考察を行いました。

建設中の清林寺三重塔(東京都文京区の)に組付けられる鬼斗・雲肘木の制作を当研究室の多軸加工機を用いて行いました。協働制作の過程、建設に携わる職人とのヒアリングを通じて、機械加工で部材を完成させてしまうのではなく、職人による仕上げや配送時の部材の欠損等を考慮してある程度仕上げ代を持たせることが重要であるという知見を得ました。制作の末、多軸加工機での加工の正確さにより、加工機9割、職人1割の分業を実現することができ、人と機械による協働制作の可能性を見ることができました。この方法で実際に清林寺三重塔に鬼斗と雲肘木の組み付けを行いました。


単眼カメラを用いた動作認識に関する基礎的研究

建設現場では作業員の安全性向上のため、カメラ映像やセンサによる危険区域への立ち入り禁止エリアや、リアルタイムな体温・心拍数の監視などが行われています。当研究では作業員の動作を認識することで危険区域への無意識な侵入などを機械的に判断することを可能とし、さらなる作業現場での安全性を確保することを試みました。

カメラ映像を用いた動作認識では数フレーム分の映像を入力とした教師あり学習を行うものが多いですが、この研究(の発展)でターゲットとする現場での動作、例えば荷物を運ぶ、タブレットで図面を確認する、などについて大量の教師映像を用意するのは多くの手間を要します。ここでは、映像から骨格(関節位置)を推定できるOpenPoseを援用し、その二次元の関節位置のシーケンスから動作を推定するモデルの開発を試みました。関節位置のシーケンスと正解ラベルは、深度カメラであるKinectV2で動作を撮影し、そこから求めた三次元の関節位置から効率的に用意することができる、というのがこの研究のポイントです。

この報告では、基礎的な動作として立ち止まる、屈伸する、走る、片手を振るといった動作を対象に試験を行い、精度高く認識することに成功しました。ただし歩いている動作の識別動作が低いため、学習用データの改善を行うことによって精度の向上を図りたいと考えています。


不整形な木材の深層学習を用いた簡易な掃引体表現に関する研究

多軸加工機を用いた木材加工に関する研究を継続的に行っていますが、製材前の不整形な材もその加工対象の一つです。以前の研究では間伐材を円柱として表現し加工を行いましたが、製材前の木材は、様々な形状を持っており円柱表現では不十分であることも多々あります。本研究ではこの問題に対して、深層学習を用いることにより不整形木材の三次元形状を簡易な掃引体として表現することで解決できないかと考えました。具体的な手法は、不整形な木材の点群データを、PointNetをベースにした特徴抽出器に入力することで、掃引体表現のためのパラメータを出力するというものです。

この学習モデルの学習のために、不整形な木材とそれを適切に表現した掃引体のパラメータを多数用意するのは現実的ではありません。 不整形な木材を模した三次元モデルとその点群を生成するジェネレータを用意することにより対処しています。この三次元モデルは円をベースにした掃引体表現であり、これにパーリンノイズを加えることにより学習データとして自然さを加えています。この三次元モデルの掃引体パラメータは既知でそのまま正解として利用できますが、この場合、パラメータの近さを損失にすることになるため推定する掃引体の節数が元の掃引体の節数と等しくなくてはいけません。これでは面白くないので、点群同士の類似度の指標であるChamfer距離を損失にしています。こうすることで生成時の節数は24、推定する節数は5といった設定が可能になります。

以上の手法により不整形な木材に対し、深層学習を用いてその概形を表現する掃引体を生成することを行いました。データベースを用いた木材の在庫管理や三次元CADでの利用など活用が見込まれ、引き続き研究を行っていきます。