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3号機 ようやく お披露目

  • 2020年9月 1日(火) 12:00 JST
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昨年度末にロボットそのものは設置済みでしたが、きちんとお披露目できるまでに半年もかかりました。理由は例のコロナのせいで、学生と一緒に密な環境下で作業することができず、私一人でのんびりやっていたからです。ロボット加工機の開発でこの先論文が出にくい(技術的には整った)段階に至り、専従の学生を配置しなかったこともありますが。

そういうわけで、春から一人でセットアップをしていましたが、昨年までのように数人同時に分担してロボットを操作していたときには気づかなかった問題に直面しました。いざ一人になると全てを手許に置かないと安全に作業できないのです。


切削した相欠きの寸法を確認(写っている作業員は学生ではありません、為念)

数人居れば①全体の安全を監視する人、②緊急停止ボタンを握っている人、③PCを操作する人などなど、それぞれに重要な機能を役割分担できるのですが、一人でとなると全ての機能を一箇所に集約する必要があります。その作業がまた面倒で、かつて実装した機能を他の方法で再実装するのですが、この手の作業は気分が乗らないものです。のらりくらりと作業するはめになりました。

半ば嫌々やったわけですが、これは怪我の功名みたいなものなのでしょう、システム全体のリストラが進みずいぶんと使いやすくなりました。実工場でのオペレーションでも、通常時は一人いればシステムを苦もなく動かせるようになりました。

さて、ロボット加工機3号機の特徴ですが、1,2号機の頃の膨大な知見から、精度の向上に特に注力してセットアップしました。ロボットそのものを大型化しリーチを稼ぐことでツール姿勢の幅を広げ、増加したペイロードでツールのハンドリングに余裕を持たせました。一般に、ロボットは大型化すると精度は落ちますので、その分を相殺できる見込みが1,2号機での検証から得られていました。また、ロボット本体だけでなく、ただのアルミフレームにしか見えないワーク支持台にも精度を向上させるノウハウが詰め込まれています。以前のように技術の詳細をペラペラ説明できないのがもどかしいですが、似たようなことを見よう見まねの後追いでやっているところもちらほら出てきているので、公言できないことばかりになってきました。ご了承ください。

五軸加工機のように動画でご紹介したいところですが、ロボット加工機は企業パートナーとの共同研究ですので、機密保持の観点から控えています。加工速度はこれまでの多軸加工機にない速度(もちろん圧倒的に速い)とだけいっておきます。代わりに、精度の分かるものとして以下の写真を公開します。動画から切り出したものをトリミングして並べています。1枚目・2枚目の赤色レーザーの線を確認してから3枚目・4枚目に視線を移してください。加工が進むに従って、切削後のターゲットの稜線にピッタリと寸分の狂いもなく載っていくのが確認出来ます。


特殊な留めの端部加工例

上の加工は、ロボット加工機の高精度加工のデモンストレーションとして制作したオブジェのものです。できあがったものは下の写真のようなかたちをしています。正四面体の6本の辺の位置に105材を配置したものを、相欠きで結合して、全体として星形の多面体を構成しました。三方から集まる軸材端部は留めで納めています。 切断組立直後ですので、綺麗に留めを構成できているのが分かります。木材ですからじきに反りが出て空いてくると思いますが、加工直後はこの水準の精度が得られています。

また、相欠きの位置は全ての材において正確に材中心にないと、端部位置がズレてしまい、2つの正四面体を嵌合させたフォルムに組めないのですが、全体形状をみていただければ分かるように、こちらも極めて正確な加工ができていることが示されています。


星形多面体のオブジェ(ロボット加工機の精度デモンストレーション)

1,2号機は実験機でしたが、3号機は実証機です。既に同型のロボット加工機をプレカット工場に導入しています。構成が異なるのでセットアップ作業中ですが、それが済めば本格的に稼働し始めるでしょう。 これまでできなかったような特殊な加工を、高精度かつ高速に実行します。実施案件での採用を検討するなら、パートナー企業に直接お問いあわせください。実物大ガンダムを動かしたい云々で有名な会社です(ロボット好きなんですかね?)。間接的になりますが、当研究室も関与することができるでしょう。特に構法上の三次元的な納まりについては当研究室に相談された方が確実かと思います。

また、扱える部材長さに4メートル程度の上限がありますが、当研究室でも切削加工を直接請け負えないか、大学管理部門と調整中です。こちらが可能となりましたら、当研究室で実施案件用の部材切削を進んで引き受けたいと思います。新しい木造デザインの嚆矢となるようなプロジェクトに関わっていきたいところです。

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