レシプロカル構造、どう造ったか?

この秋に制作した「レシプロカル・タワー」ですが、基本ユニットを鉛直軸廻りに90°、4回転させて全体を構成しています。全116個の部材からなり、基本ユニットでみると29種類の部材からなります。


レシプロカル・タワー基本構成

29種類の部材はどれも、普通の製材の両端を切り落とし、木口面と側面に計8個(端の部材は4個)のダボ穴を開けています。こう書くと造作ない加工のように思われますが、両端の切り落としは種類毎にすべて微妙に異なるし、木口面に開くダボ穴は材長方向に平行ですが、側面に開くダボ穴は側面の法線とは一致せず、ペアとなる材の端面の傾きの違いに呼応して微妙な角度の違いがあります。


部材の基本形

ところどころ材端が鋭利に飛び出していますが、鼓形状の凹面でこれらをきれいに切り落とすのはモデリングに手間が掛かるのでそのままです。デザインとしてきれいに纏まれば切断加工そのものは容易ですが、検討した結果飛び出たままの方が実は好みだったのもあります。参考までに、同じレシプロカル構造で正12面体および正20面体を制作しましたが、こちらは全体が凸面になっており端部を切り落とすモデリングも容易で、また、切り落とした方が整然とし多面体のフォルムにもマッチしていると思います。


レシプロカル・多面体(モデル、加工機、実制作物)

このレシプロカル・タワー、既に建築のプロフェッショナルな方々にご覧いただいていますが、宮大工らを案内する機会が先日ありました。

さて、これを人手でやるならどうなるか、という話なのですが、宮大工らのいうには、そもそも墨入れができないのでその段階で諦める、とのことでした。もちろん手間・コストを惜しまずともよい、そういう条件があれば彼らはやり遂げることでしょう。


レシプロカル・タワー (記事はこちら ⇒ レシプロカルタワーを制作しました

この作品を成立させているのは、いわゆるアルゴリズム・デザインと計算機制御の多軸加工機の連係です。形状の生成から出力まで、コンピューターで一貫処理します。実寸で部材として欲しい形状そのものを定義し、その定義から加工機へのモーションシーケンスを生成し、さらに、加工機の制御はNC(数値制御)となっています。デザインから制作までをシームレスに連続しています。

今回用いた五軸加工機の利点は、大工の重要な技量のひとつである墨付けが不要で自由自在に加工ができることでしょうか。宮大工の仕事では原寸図を書いて始めて各部の寸法が確定し、部材の墨付けに移ります。設計図は参考図に過ぎません。3D CADで納まりまで忠実に正確にモデリングすることは原寸図を書くことに等しく、また、ここに誤りがなければそのまま加工機の入力となり得、人が加工する場合に比較すると、手間もコストも極端に小さいです。つまり、その後の工程が自動化されているならば、設計を煮詰める価値がより高くなる、ともいえます。

人工技能の研究を始めてしばらく経ちますが、職人技の単なる置換えではつまらなく感じることがあります。人技を超えた何かを生み出して、あたらしい建築表現に展開できたらいいのにともよく思います。今回の制作はその方向性へのチャレンジですが、一昨年のカテナリードームもそうでしたが、ご覧頂いた方々からの評判もまあまあよいので、これからも定期的にチャレンジする計画です。「これできる?」そういう問い合わせも歓迎します。


カテナリー・ドーム (記事はこちら ⇒ 木造ドームを制作しました

とはいえ、「こんなこともできないの?」枠は意外と大きく、単純にみえても機械化が難しい仕事は数多いのです。人工技能の基礎研究は課題山積(そのぶん研究ネタは尽きないー笑ー)です。次回の制作では、今回のような現代的なアルゴリズミック・デザインを指向するものではなく、基本に立ち戻って、伝統木造構法で必要とされる技能を確認する為のものにする予定です。


HLAB
http://www.hlab-arch.jp/article.php/20191219174534854