2018年度修士論文の発表会が行われました

2018年度の修士論文発表会が行われました。本研究室の学生の修士論文を簡単に紹介します。

実大建築物の部材を加工するマルチツールロボットシステムの開発

多関節ロボットによる木加工に関して、これまでの試行により五重塔の屋根隅部模型や実寸大螺旋階段の手摺、特殊な欄間など多様な形状の木質部品加工が可能であることが分かっています。ロボットに外部走行軸を足して可動範囲を広げるとともに、加工形状に合わせて、丸ノコ、ミル等の工具を自動で持ち替えながら複雑な形状を持つ部材加工を一貫して行うことにより、さらに効率よく、幅広い部材を制作できるようになると考えられます。

本研究では、ロボットをより大型化し、複数の工具を自在に扱えるマルチツールロボットシステムを開発することによって、実建築大の部材加工への適応を試みました。開発したシステムの検証として伝統木造建築である四脚門の部材加工を行いました。本研究で開発したシステムは形状や工具を限定せず、伝統木造建築のような多種多様な部材にも対応し、汎用性が高いことを示しました。また、墨付け、刻みなど属人的な技術を必要とせずに部材加工を行うことが可能となりました。



伝統木造建築の制作における部材管理に関する研究

ロボット加工では加工パスと呼ばれるロボットの動きを制御するプログラムが必要です。この加工パスを求めるまでにはCADなどのモデリングソフトで目的の部材の3次元モデルを作成し、さらに別のソフトウェアで加工パスを導出するといった工程が必要になります。伝統木造建築のような部材数が多い対象の制作を行う場合、3次元モデルや加工パスなどの加工用データが大量に生成され、一般的な方法ではデータの管理が煩雑になってしまいます。加えて、複数人で同時に並行して作業を行う場合、チーム内で作業の重複が起こってしまうなどの問題も起こっていまいます。

本研究ではこれらの問題を解決するための部材管理システムの試作を行いました。データベースを介したWebアプリケーションを用いて、加工用データの紐づけ管理、部材のバージョン管理、加工状況の進捗管理を行いました。伝統木造構法の四脚門の制作を対象とした部材管理システムの実験では、制作に必要なデータの管理が容易になり、作業の重複といった問題も回避できました。 本研究ではロボット制作における部品管理に限っていますが、本研究を応用すれ実際の建設現場における部署間、会社間でのBIM(Building Information Modeling)のデータ共有や作業状況の共有などにも利用できると考えられます。



ロボット施工のための曲面情報の操作に関する研究

これまで、多関節ロボットに様々なツールを持たせて建築の木質部品を加工する研究を行ってきました。その中でもミリング加工は複雑な曲面を加工することできるため、意匠材の加工を行うことができます。ロボットは様々な角度からツールを挿入することができ、今まで加工が困難だったアンダーカット部分を加工することができるため、より柔軟な加工が実現できます。しかし、ツールを傾けて加工するにはワークへの干渉問題を解決して角度を決定する必要があります。

本研究では、切削対象の3次元モデルの表面情報を分析し、面に合わせた角度を用いて一括でモデル表面を切削するミリング加工パスの導出アルゴリズムを作成しました。また、作成した加工パスをシミュレーションし、視覚的に検証を行えるソフトウェアを開発しました。実際に彫刻的意匠を持つ建築材の制作を行い、作成した加工パスの検証を行いました。この研究により今後、ミリングに限らず振動のみ等、モデル形状に合わせた柔軟な加工パスが作成できると考えられます。



間伐材の有効化活用を可能にするロボット加工機の応用研究

間伐材は、製材と異なり形状が不揃いであり、今までの大量生産を前提とした加工装置では、付加価値の高い活用は難しくなっています。しかし、腕型ロボットを活用した、柔軟性の高い加工機やコンピュータビジョン技術、三次元形状データの解析手法等を活用することで、個々の形状が異なっていてもそれぞれに適切な評価を行い、付加価値を高める加工が実現できます。また、製材工程なしの加工は、加工に伴う欠損を最小にし間伐材の断面を大きく活かした部品化が可能となります。

本研究では、間伐材の写真測定で得たデータを解析し、データベースにて管理することで、設計した部品形状を切削するのに最適な間伐材をストックから検索することを可能にしました。また、間伐材を高効率に固定できる把持機構と腕型ロボットを連携させ、間伐材の側面に対し自由な加工を可能にしました。これら開発したシステムの試験として,正七角形断面の壁体やピースエンピース構法の壁の加工を行いました。この研究によって今後、間伐材活用の幅が広がり、間伐材の市場価値の向上にも広がっていくと考えられます。


HLAB
http://www.hlab-arch.jp/article.php/20190328145737341