建築でコンピュータ、する?
2023年6月 5日(月) 00:02 JST
仙台にて行われました建築学会大会(東北)に参加してきました。本研究室からは以下のタイトルにて情報システム技術で6本、材料施工で3本の計9本の研究発表を行いました。その内容を簡単に紹介したいと思います。
また、平沢先生が研究協議会「ICTによるコンクリートの生産革命」のパネリストとして参加し、「建築分野におけるAI活用展開の可能性」というタイトルで本研究室で行ったAI研究の紹介を行いました(このウェブサイトでもAI活用に関連する取り組みを卒業論文の紹介や大会参加報告などで紹介してきましたが、近い将来、これらの取り組みをまとめたページを作成する予定です)。
より写実的な建築ビジュアライゼーションを実現するため、建築CADとゲームエンジンのデータ連携システムを試作しました。従来の方法では、建築CADのモデルをゲームエンジンに読み込ませるためには中間ファイルへの変換などの手間がかかり、ゲームエンジンを使ったより写実的なVRでの建築確認を気軽に行うことはできませんでした。しかし、データベースを介することで、ゲームエンジンとリアルタイムでデータの連携が行えるため、建築CADで設計しながら、VR上でも写実的な材質の質感や影の陰影を確認し、かつ設計の変更ができます。また、ゲームエンジンでは様々な機能を追加することができ、音声認識機能やモデルの表示切り替え機能など必要に応じた拡張機能を付け加えられるため、使用者に応じてカスタマイズすることも可能です。
試作したVRアプリケーションでは下の動画のように実際の建築空間の検討に有用であることを確認しました。
産業用多関節腕型ロボットは数値制御により加工に特別な技術を要するもの、また手加工では不可能なデザインであっても正確に加工することができます。しかし、ロボットの作業範囲に限りがあることから実建築大の部品に対応することは困難といえます。
そこで今回は、一軸走行台を付加し作業範囲を拡大したロボットにより、螺旋階段の手摺を実物大で制作しました。また、ゴールドバーグ多面体を例に、小さな部品を並べて一度に加工できることも確認できました。この研究により、ロボットによる建築部品加工に実用性が増したのではないでしょうか。
膨大に蓄積された設計情報の管理方法として、オートエンコーダを用い図面を符号化する試行を行いました。外構の設計情報を対象に、構成要素毎に塗り分けを行った構成マップ(左図)を用意し、オートエンコーダにて1024要素の特徴量に符号化し、これによる管理やクラスタリングを行いました。
といった検証とその結果について報告しました。
五軸加工機はプレカット工場の木加工などで用いられている工作機械の一つで、自由度の高い加工ができます。一方で、加工機のツールをどのように動かすかという加工パスについては、部材の形状ごとに異なったものとなるため、多品種少量生産のように部材種が多い場合にはパスの導出が大きな手間となります。
本研究では、部材の形状定義ファイルから、丸ノコで加工できる部分を自動で判定するアルゴリズムについて考察しました。形状の幾何的情報から丸ノコが通ることのできる部分を判別しています。また、安全な加工を実現するため、五軸加工機の動きを仮想的に再現するシミュレータを開発しました。導出したパスが五軸加工機本体や部材の他の部分にぶつからず、安全に加工できるか確認できます。これらの開発した五軸加工機を用いた加工検証として、各部材が少しずつ異なるカテナリードームを制作しました。
三次元プリンタは、デジタルファブリケーションで用いられる工作機械の一つです。従来は樹脂や石膏が素材として使われ、建築分野での利用はスケール模型の制作などにとどまっていましたが、近年では強度のある素材を使用したものが増えてきており、実建材への応用が見込まれるようになりました。そこで、本研究では、樹脂の積層に併せてカーボンファイバーを入れ込むことで強度のある部品の造形を可能とする三次元プリンタを導入し、家具接合部への適用を試みました。
三次元プリンタを使用することで、取り合いの悪い箇所への対応が容易にできる、微妙な設計の違いにもコストを変えず対応可能であることなどが確認されました。また、今回はカーボンファイバーを素材に含んだものの使用でしたが、家具の接合部としては十分な強度があり、金属素材の三次元プリンタを使用した場合さらに期待が持てると考えられます。
VRやCG内で木目を表現しようとするとそのマテリアルがコピペになったり、実際にはつながっているはずの木目が破綻したりしてしまいます。 以前にも樹木の生長モデルに基づき木の(ソリッドテクスチャ、プロシージャル)テクスチャをつくる、という試行を行いましたが、今回は、ゲームエンジン上のマテリアルとして実装しを行い、より木目らしく、かつ実用的となるよう工夫を行いました。実装はUnreal Engine4上で行い、マテリアルBP内でHLSLを用いたカスタムノードを用意しつつ、幹や枝からの距離に応じ濃度マップを発生させる(左図左)、その濃度に応じ縞を発生させる(左図中)、同様に濃度によって赤身と白太を塗り分ける(左図右)、という3ステップで木目を表現しました。 右図は削りだしの升にこのソリッドテクスチャを適用したものですが、破綻のないそれらしい木目が表現できています。もちろんまだ改良の余地はありますが、木を表して使うシーンのプレゼンテーションにおいて、訴求力を高めるといった効果も期待できます。