建築でコンピュータ、する?
2025年4月27日(日) 08:30 JST
2016年度修士論文発表会が行なわれました。本研究室の学生の修士論文を簡単に紹介します。
建築は様々な部品によって構成されています。その中には装飾的な部品も数多く存在し、建築に彩りを与えてくれます。しかし、そのような造形を制作する技能を持つ職人は減少しています。この問題に対して機械加工の活用が考えられますが、建築部品の生産では主に継手・仕口が対象とされ、加えてその形状は生産の合理化のため簡略化されています。このような現状では、複雑な形状を持つ装飾的な部品は加工できません。
本研究では、多関節ロボットによる装飾的な建築部品の加工を目的とし、複数のデザインの欄間の制作を通して、多様な形状を同様のコストで生産可能なミーリング加工のシステムを構築・検証しました。
テンセグリティは圧縮力と引張力のそれぞれを専門に負担する2種類の材(圧縮材・引張材)で構成される構造体で、圧縮材同士が互いに接触しない浮遊感のあるデザインが特徴です。また、その見た目とは裏腹に頑丈であるという特徴もあります。このように独特で優れた特徴を持つテンセグリティですが、建築での利用はあまり見られません。
他方、生物の身体にもテンセグリティと類似した構造が見られます。それらはBiotensegrity(生体テンセグリティ)と呼ばれ、医学や生体工学の分野で研究がなされています。
生物の身体はテンセグリティに類似した構造を持ちながら、柔軟で連続的な動きを実現しています。それを参考にすれば一般的なテンセグリティも動的な変形が可能であると考え、昨年度からテンセグリティの可動化と建築利用に取り組んできました。本研究では引き続き、テンセグリティの建築利用を目的として、可動テンセグリティの変形とその制御について重点的に検討を行いました。
一から自作した五軸加工機により、複雑な木質部品の加工を行うことで、新たな校倉のデザインを実現しようという研究です。実現のためのポイントは二つ。
一つ目は、正確な加工が行えるようなハードウェアそのものの改良です。直動軸であるXYZ軸をボールねじに、回転軸であるAB軸を剛性の高い金属バーツに換装し、繰り返しによる誤差、切削抵抗によるブレを軽減しました。
二つ目のポイントは、丸ノコが可能とする加工を三パターンに整理し、対象とする形状をこのパターンの組み合わせとして表すことで五軸加工機の動きを算出するという手法です。実装した五軸加工機を用いて、新たに設計した校倉の納まり部や、アルゴリズミックな校倉のデザインを制作し、これからの部品加工における五軸加工機の可能性を確かめました。
近年Oculusをはじめとし注目されるVRを建築において活用しようというテーマに取り組んだ研究です。建築分野においても三次元CADが用いられるようになり、ウォークスルーなどのVRも使われるようになりました。一方、ゲーム業界ではゲームエンジンと呼ばれるVRシーンのエディタの進化が目覚しく、よりリアルで表現に富んだVRを作る環境が整いつつあります。
ここでは、ゲームエンジンでのVR開発における、物質表現に関する技術(ノーマルマップ)、光環境に関する技術(ライトマップ、SSAO)などの要素技術を整理し、これらを取り入れた建築のVRを試作しました。また、ユーザ(プレーヤー)の操作に応じて壁紙を変更するなどプレゼンテーションや合意形成に向けたツールとしての展開も示しました。