2024年6月24日(月) 14:45 JST

2014年度修士論文発表会が行われました

  • 2015年3月18日(水) 17:51 JST
  • 投稿者:
    ゲストユーザ

2014年度は2名の学生が修士課程を修了しました。それぞれの研究内容を簡単に紹介します。


コンピュテーショナル・デザインの系譜からみるアルゴリズミック・デザインの設計手法に関する研究

アルゴリズミック・デザインを用いた建築事例は、自然の数理モデルをアルゴリズムとして作成したものが適用されます。しかしそうした多く建築において、アルゴリズムの適用範囲はごく一部分であることや、全体に適用された場合においても提案される複雑な形態が建築として実現するための具体性を有さず、そのほとんどが実現に至らないなど、この手法の持ちうる効力が設計に十分に発揮されているとは言えません。この手法に用いられるアルゴリズムの参考となっている自然の事物の形態は、様々な環境に適応した結果として、合理性に裏付けされた美しさを有します。つまりこの手法の意義は複雑な形態を生み出すことだけでなく、生成した形態になんらかの合理性や美を内在させることに有ると捉えることもできます。この立場に基づけば、建築の場合においても同様に、アルゴリズムには「建築の組成」を主軸とした上で自然の数理モデルを用い、その結果として生成された形態が意匠として採用されるべきであるといえます。
本研究では、アルゴリズムに生成される形態に建築としての具体性を与えることを目的とし、 そのアルゴリズムを記述する上での有効な建築の組成の捉え方をし、ケーススタディをもってその解決策を実践しました。

 フランク・ロイド・ライトは建築を有機体としてなぞらえ、その表層でなく空間の構成が有機的であると述べました。これまでに実現された建築におけるアルゴリズムの適用範囲は、その表層に留まる事例が中心です。建築が構成にアルゴリズムを用いることで、これまでにない建築のあり方が見えてくるのではないかと考えます。建築は目的性を内包し、それを利用する人の営みを満たす空間であり、建築の構成はこれに適っていなくてはなりません。しかし、自然に関するアルゴリズムは「人」との関係がなく、そのまま適用しただけでは、生み出された形は単に複雑なものとなってしまいます。建築の組成を 表層-ファサード-、構成-コンポジション-、人-サーキュレーション- とするとサーキュレーションの軽視がアルゴリズミック・デザインの部分的な適用に留まる原因だと考られます。


 これらから建築のコンポジションとサーキュレーションに主眼を置き、これらを制御・調整しながら形態生成を行なうアルゴリズムを作成し、ケーススタディを実践しました。数理モデルのベースとして三次元ボロノイ分割を用い、分割の母点の生成法と分割面の発生を制御することで、目的性に適う空間とそれらを繋ぐ動線空間を設計しました。上の2図はサーキュレーションに係る拡張を行なったかそうでないかの比較になります。上左図は通常の三次元ボロノイ分割で、建築として用いるのは非常に困難であることがわかります。上右図は本研究で作成した三次元ボロノイ分割による動線確保の様子です。下図はさらに空間の関係から床や階段を生成した三次元モデルです。




指物に用いられる継手仕口の三次元デジタルアーカイブと建築への応用に関する研究



指物とは、釘を使わずに枘や溝を掘って差し込むことで組み上げられる木製家具の総称であり、またその構法を指します。この指物に用いられる継手仕口は複雑で美しく、さらに十分な機能を持ち合わせています。それらの中にはどのように嵌合しているのかを見ただけで理解することが難しい継手も多くあります。指物の歴史は古く、平安時代まで遡ることもできますが、現在では需要の減少に伴い、熟練した技能を持った職人が減少し手法が失われるという問題も抱えています。本研究では指物に用いられる技法の保存や、そのための理解の助けとなるような三次元モデルのアーカイブ作成と、嵌合方法のアニメーション化に取り組みました。各篏合アニメーションはOpenSCADによるものです。

水の逆は逆枘の一種です。上左図は、水の逆と呼ばれる継手を用いた升の三次元モデルになります。各継手部分はパラメトリックにモデリングしてあり、設計にあわせて自由に呼び出すことができます。上中図はこれを3Dプリンタで出力し、組み上げたものです。これらは一目見ただけでは嵌合方法が分かりづらい形状となっていますが、上右図のアニメーションをご覧いただければ、その篏合方法を理解して頂けると思います。この升は四方の板を同時に篏合させるため、壊れにくい頑丈なものになっていることも一つの特徴です。

この他に木を上下交互に編んだように見える千鳥格子についても同様のモデルを作成しました。動かない三次元モデルを見ただけではどのように木が組み合っているのか理解することが難しいと思いますが、アニメーションを見ると一目で理解できるようになっています。密に組み上げっているようにみえる格子の内部には実は空洞が残っていることになりますが、組みあがった格子は各接合部の摩擦によって意外にも強固になっています。

また本研究では、それらの技法を建築へ応用する方法を検討しました。作成した三次元モデルはパラメトリックに作成してあり幅成や材厚などを簡単に変更できるため、建築への適用例を考察することが簡単になっています。上の図では千鳥格子の構造を応用した目潰本籠目組手を用いて壁を作成した図になります。指物を意匠と構造の両面で取り入れた例となっています。
 人の手によってこれらを制作することは労力の点で難しいですが、機械化などの手法を取り入れることで、実現できるようになるかもしれません。 納まりが目に見えることや、逆に一見不思議に見える部材関係を実現させている、というところが指物の面白いところです。