2013年度卒業論文発表会が行われました

修士論文発表会に続き、卒業論文発表会が行われました。本研究室の学生も発表を行ったので、それぞれの内容を何枚かの図とともに簡単に紹介します。


卒業研究

卒業論文





セキスイハイムM1の三次元モデルに基づいたデジタルアーカイブに関する研究

ユニット工法で脚光を浴びたセキスイハイムM1の三次元モデルを作成し、デジタルアーカイブ化を行いました。各部品の雛形の作成には当研究室お馴染みのGDLを用いています。左図がその部品雛形を組み合わせて構築した三次元モデル、右図が三次元プリンタを用いて作成したスケール模型です。今回、部品を実寸通り縮小して出力すると模型としての強度が得られないものがあったので、実寸による三次元モデルと三次元プリント用のモデルをCAD上で簡単に切り替えられるようにしました。もちろん、それぞれの部品は三次元モデル、スケール模型において対応がとれています。


模型作成時の手順はユニット工法の実際の施工工程に倣い、構成部品あるいは部位ごとに大量生産しユニットを構成したのち、ユニットを結合しています。三次元形状だけでなく、M1の部品構成をも表現したデジタルアーカイブの作成を行うことができました。


タイルパターンとコンピューテーショナルデザイン

この研究では、複雑なタイルパターンの生成規則をアルゴリズム化し、多様なパターンの生成を試みました。タイルの配置パターンはペンローズ・タイルを用い、テクスチャや色のパターンはイスラムタイルの法則性のひとつである「自己相似性」と「点対称性」を取り入れています。詳しい内容は割愛させていただきますが、左図が前者の法則性を用いたパターンで右図が後者の法則性を用いたパターンです。単純なようで複雑ななかなか面白いパターンができているのではないでしょうか。また、このタイルパターン生成システムをCADに実装し、数値を変更することで多様なパターンをCAD上で簡単にシミュレーションできるようにしました。


タイルパターンを生成できる面はまだ二次元平面のみですが、今後三次元曲面のようなものでも適応できるようにしていきたいと思います。


プロジェクションマッピングを用いた模型表現の試行

プロジェクションマッピングは、単に平面に投影するのではなく、映像素材に立体情報や表面情報をもたせ、建築物や家具などの立体物の面にぴったり投映すること、またそういった技術のことを指します。マッピングの利点として、対象がもつ情報があるときはより立体的に、そしてあるときは全く別の表情を浮かびあがらせ、リアルな立体感・空間感を表現できることです。本研究は建築模型にプロジェクションマッピングすることで、模型ではなされにくかった外装材や照明計画の検討が容易になるのではないかと考え、その実用性を検証しました。


プロジェクションマッピングで最も重要な事は被投映物と映像の位置合わせです。今回はマーカトラッキングという手法を用いて模型と映像の位置を自動的に合わせるシステムを作成しました。左図が、スチレンボードで作成した建築模型に、その三次元CGを投映した写真です。イルミネーションのイベントなどで見られるプロジェクションマッピングでは、投影面が固定されていることが一般的ですが、建築模型が対象の場合、多方向から見たり動かすことが予想されます。本システムでは、マーカトラッキングにより、リアルタイムで位置合わせを行うため、模型が動かされても適切な重畳を保つことができます。しかし、右図のように軒などの飛び出た部分では、影ににより正確な投映ができないところもありました。もっと複雑な形状でも可能になるよう研究を続けていこうと思います。


曲面屋根の構成方法に関する研究

モデリングソフトの発展により、学生でも三次元曲面をモデリングすることが容易になりました。ですが、厳密に三次元曲面の精密な模型を作ることはなかなかは簡単なことではありません。RC造ならまだしも、鉄骨造や木造では構造部材を組み合わせて曲面を構成しており、その構成パターンを手作業で作成することは困難でしょう。そして、一般の建築例でも曲面を構成する部材の配置パターンは主に格子型となっており、部材の自由な配置デザインはあまりみられません。このようなことから本研究では、構成部材の配置パターンを簡単にスタディできるシステムを作成し、さらに意図した形状が実現するか検証しました。本システムでは、曲面構成部材のデザインは二次元平面上でマウスクリック操作で行います。曲面データは他のモデリングツールで作成したものを取り込むこともでき、また、本システムで作成したデータを他のモデリングツールに出力することもできます。左図は本システムを用いて配置パターンを適応した曲面、右図がそのデータを外部モデラで編集しディテールまで作成した三次元モデルとそれを三次元プリンタで出力した模型です。


以上のように本システムを用いることで手作業では難しかった曲面構成部材のデザインスタディが可能になり、曲面を構成することができました。しかし、本研究はあくまで部材配置の自由なスタディが目的であり、構造的側面の考慮はしていません。今後は部材の配置と同時に構造解析を行い形状の実現性をも検証できるシステムを実現したいと思います。


拡張現実感を用いた模型製作支援システムに関する研究

当研究室では、文化的価値のある建築物を対象に、資料性の高いデジタルアーカイブの作成を継続的に行っています。資料性の高さとはその三次元データの正確さでもあります。そこで部品単位で模型部品として3Dプリンタで出力し実際に組み上げることで、作成したデータが正確であるかを検証してきました。(詳しくはデジタルアーカイブのページヘ)ただ、特に伝統木造建築のように多種多様な継手仕口や膨大な数の部材で構成された例では、部品の納まりや組み上げ順序などの過程でどの部材がどこに組み上げられるのか頭を悩ませてしまいます。今回、ARを建築に応用し三次元部材データと模型部材との情報をリンクさせ、さらにその情報を組み立て時に表示させる模型制作支援システムを作成しました。ARを用いるにはそれを表示するディスプレイとカメラが必要になります。据え置きディスプレイと模型とを交互に見比べて作業をすることはあまり効率的ではありません。そこで模型製作者にシームレスな教示を行うために図のようなカメラ付きヘッドマウントディスプレイを作成しました。これを装着し作業することで目の前にARによる情報が表示されるため、円滑に組上げ作業を行うことができます。


実際に伝統木造建築である法華経寺五重塔(千葉県)の1/15スケール模型とその三次元CADデータを題材として本システムの実用性を検証しました。図のように次に模型部品を組み立てる箇所が赤くハイライトで表示されます。そして、これまで組み立てた箇所を青く表示することで全体の出来形確認をすることもできました。マーカの誤認識や非検出により三次元モデルをうまく表示できないことがあり、マーカの数、配置のパターンを変えうまく重畳できる方法を試行錯誤しました。ARの研究はさかんに行われているため今後マーカに頼らないシステムができることを期待します。

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