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2013年度 GDL作品発表会とグラフィソフト賞 ※08.04追記

  • 2013年7月17日(水) 16:19 JST
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GDL作品発表会

2013.08.04 院生の作品紹介などを追記しました

GDL講習会の集大成として毎年開催されているGDL作品発表会が今年も開催されました。例年にもまして受講生の緊張感が伝わってきましたが、今年からグラフィソフト賞があるからなのでしょう。

2013_GDL_undoukai_00

それぞれの作品の紹介、グラフィソフト賞の結果を見るには「続きを読む」を押してください。

今年の受講生は9人と例年と比較してやや多めでしたが、それぞれ個性に富んだ面白い作品を発表してくれました。この発表会ではGDL講習会を受けた学生だけでなく、当研究室に所属する修士、博士の学生も一緒に作品を発表します。今年度からグラフィソフト・ジャパン株式会社さんより「グラフィソフト賞(本年度受講生のみ対象の新人賞)」の提供があり、発表会は大変盛り上がりました。

グラフィソフト賞はグラフィソフト社独自の選考です。
発表会の様子をリアルタイム配信しての審査でした。

◇受講生の作品◇(グラフィソフト賞対象作品)

シャンデリア

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シャンデリアをGDLでモデリングした作品です。シャンデリアのパーツ一つ一つがGDLによって形状、座標の管理が上手くなされていて、大変きれいな作品に仕上がっています。中央の球に入ったカットもガラスのテクスチャと相まって大変きれいですね。

水族館

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こちらはGDLを使った建築として水族館をモデリングしています。2重に作られた球と直方体の組み合わせとそのランダム性がGDLで定義されており、それぞれの表情を見せていて魅力的ですね。複数個のオブジェクトと球の周りのスロープで表現された実際の使われ方も含め、まとまった作品となっています。

ブルジュ・アル・アラブ

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こちらの作品はドバイにある建築ブルジュ・アル・アラブをモデリングした作品となっています。ファサードとなるフレーム、スラブの曲線が上手く表現されています。配置されたライトもレンダリングによって魅力的な表情を見せるアクセントとなっています。

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こちらの作品はGDLを使って「竹」をモデリングした作品です。有機的な形状をGDLで管理して作成するのは難しいのですが、上手く近似・処理して作られています。竹の節や繊維、葉がそれぞれ違う形状を生成するように作られており本物の竹のようですね。

30セント・メリー・アクス

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ロンドンにあるフォスター・アンド・パートナーズの設計による建築「30セント・メリー・アクス」をGDLでモデリングした作品です。建物の形状は球の2次元配列を上手く引き伸ばして得られており、実際の建築とそっくりに作られています。

曲面を利用したアルゴリズミック建築

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この作品の顔となるのはGDLのよって制御された屋根の曲面です。指定した点を通る曲面として設計されており、自由に変更を加えることができる点も魅力の一つです。ダイナミックなモデリングによって大変魅力的なファサードが生まれていますね。

オセアノグラフィック

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こちらの作品はスペインにある水族館、「オセアノグラフィック」をモデリングした作品です。360度、周囲に向かって伸びるシェルと窓の座標管理が難しい作品ですが上手く処理されることによってきれいなファサードが表現されています。

Helix Tower

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こちらの作品は黒川紀章が構想したDNAの二重螺旋構造を基本とした構造物をモデリングしています。4本の螺旋をつなぐ構造体も丁寧なモデリングによって複雑な表情を見せており、見ていて飽きない作品となっています。

bridge ☆グラフィソフト賞☆

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こちらの作品は橋をGDLでモデリングした作品となっております。滑らかに波打つ橋の形状と上部のアーチから橋を吊るように伸びるワイヤーからなる柔らかな雰囲気が特徴的です。GDLに限らず言語プログラミングによるモデリングでは、意匠や構造あるいは環境などの問題を解きつつ、説得力のある独創的な形を生み出せるのではと期待されているようですが、こういった将来性から、全体の形状を数式の組み合わせで定義し橋のデザインとしてまとめたこの作品がグラフィソフト賞として選出されました。

今年は講習会参加者が多かったこともあり、お互いが切磋琢磨したレベルの高い作品発表会となりました。修士、博士の学生の作品につきましては後日記事に追加します。08.04追記

グラフィソフト・ジャパン株式会社さんより立派な賞状が届きました。来年この賞状を手にするのは一体誰になるのでしょう。


◇院生の作品◇

作品紹介の前に少し解説を。

GDLでモデリングしたオブジェクトは「公開変数(パラメータ)の操作」「ホットスポットによるグラフィカル編集機能」の2つの方法で変数を操作し、モデルの形状を変化させることができます。いくつかの院生の作品にはこのグラフィカル編集機能が実装されています。これによりオブジェクト設定ダイアログを開く頻度を少なくし、図面上でのより直感的なモデリングが可能となっています。 他にも設計におけるニーズに応えるべく、様々な手法が用いられています。それらの点に着目してみてください。


観覧車

観覧車のモデルです。部材の繋がる頂点は配列で各々管理されており、その頂点をGDL講習会第5回で学んだ傾くロッドで繋いでいくことで躯体を作っています。 ゴンドラはソリッド演算を使って窓の部分をくりぬいてあります。是非ゴンドラが回転するところを見てみたいですね。


ジェットコースター

CAD等でよく用いられるb-spline曲線を使って、自由にジェットコースターを設計できるGDLオブジェクトです。b-spline曲線は複数の制御点を滑らかに繋いで表現される曲線です。2次元では下左図のようになります。今回はこれを3次元に拡張し、3次元の形状にも対応できるb-spline曲線を作成しています。次にb-spline曲線を基にジェットコースターのレールと支柱を設置していきます。レールは上面・下面が区別されているため軸方向の回転が考慮されておらず、傾く円柱をそのままこのレールに利用することができません。そのためこれには2011年度GDL講習会の傾くH型鋼を参考にレールを作成しています。


立体迷路

クラスタリングを利用して作成した立体迷路です。 ランダムに要素(部屋)間の壁を壊していきます。このとき、つながった部屋をクラスタリング(グループ分け)します。 ここで2つの条件「同じクラスタ番号に属す部屋の間の壁(図の赤い線)は壊さない 」 「すべてが同じクラスタ番号に属すまで続ける」を与えることで、ループ・死に領域がない迷路が作られます。 本作品ではこれを3次元に適用することで迫力のある立体迷路を作成しています。

電柱

こちらは電柱のモデルになります。グラフィカル編集ホットスポットにより電柱の高さや電線の長さ・伸長方向を容易に編集できるようになっています。シティモデルに大量に配置することを考慮し、電線のたるみといった特徴は残しながらシンプルなモデリングを行っています。

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障子

ArchiCADの図面上で自由な意匠をモデリングできる障子です。この障子は、ホットスポットによるグラフィカル編集機能をメインに使用しており、ユーザーは縦材・横材・円弧形状の材の本数を公開変数から設定し、材の位置と長さと角度はグラフィカル編集で操作することができます。 グラフィカル編集ホットスポットを活用したモデリングの良い例になっていると思います。


任意の点を通過する曲面

統計学には、入力したデータに対し所望するデータとなるべく近い値を出力する関数、つまり「指定した座標の近くを通るような関数」を作る関数近似問題というものがあります。本作品はその解決手法の一つ、ガウス関数を用いた関数近似を実装し視覚化しています。

ガウス関数とは下の図のように、ある点からの距離により値が求まる関数(放射基底関数といいます)のひとつです。今回の手法では、この基底関数に重み付け係数を掛けたものを、入力データの個数分だけ重ね合わせて近似関数を構成します。

GDL部品に実装したインタフェースとしてグラフィカル編集ホットスポットを利用し、曲面が通る点の座標データの入力をマウスによる点の平行移動で行えるようになっています。また、オブジェクト設定ダイアログから入力データの個数を動的に変えられるよう、配列での値の受け取りにちょっと工夫をしています。

本来このような関数近似の手法は、実験などにより得られた有限個の値からある系全体を表わせるようなひとつの関数を半経験的に求める、といった際に用いられます。今回のように建築に用いる場合では、構造的に最適化されているといった利点はありませんが、複雑な曲面がひとつの数式から導かれているという数理的な美しさが魅力だと思います。また、入力データに表れる設計者の恣意性と、得られる曲面の意外性のバランスが本作品のポイントです。


テラゾーブロック

建物の内装材として用いられるテラゾーブロックを模した作品です。中に含まれる砕石をランダムに配置することで、一枚一枚表情の異なるブロックを生成することができます。 砕石は凹凸のあるメッシュと球によるソリッド演算を用いることで、これもまたランダムに形状を生成できるようにしています。


壁に自然な凹凸を生み出す


GDLで作った壁のオブジェクトです。建築の三次元設計をしていると、一枚板のような表現でなく質感のあるパースを作成したい、というニーズは少なくはないでしょう。しかし思うようなテクスチャというのはなかなか見当たらない、ということがあります。以前のGDL運動会でこういったテクスチャを生成するアプリケーションの作品がありましたが、この手法ではGDLとArchiCADに既にパックされているテクスチャを用いて、自分の設計に沿った質感を作成しています。この壁オブジェクトではタイル割りや目地、タイル割りされた面の平滑さなどの設定を行うことができます。テクスチャに合わせてこれらパラメータを設定することで、上図のように簡単に多様なシーンを表現することができます。


L-SYSTEMによる自然な樹木

L-SYSTEMは自然物の構造を表現できるアルゴリズムです。本作品では幹・枝の成長ルールにL-SYSTEMを採用することで樹木を生成しています。 ルールは文字で表現され、ステップが進むにつれ枝が成長、広がっていきます。 また乱数によって図面上に配置するたび形状が変わるため、より自然な並木を表現できます。


フラクタルシティ

GDLのCALLコマンドによる再帰を使ったフラクタルシティです。三枚目の画像にあるように四角形を分割するGDLファイルを5パターン用意し、それぞれを適宜呼びながら街を分割しています。 ある程度まで四角形の面積が小さくなると、そこに家(またはビル)を建てるという単純な仕組みですが、なかなか街らしい三次元モデルができています。


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2013年度GDL作品発表会はいかがでしたでしょうか。次年度の講習会も例年と同じく4月からになる予定です。定期的にアップしていた講習会に関する記事はしばらくお休みとなりますが、講習会で扱わなかったtipsや日々の研究で発見した面白いGDLの使い方など、引き続き不定期更新していく予定ですのでよろしくお願いします。

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