2018年4月26日(木) 16:20 JST

HMD用のカメラマウントを作成しました

  • 2013年5月 8日(水) 12:14 JST
  • 投稿者:
    ゲストユーザ

ARの実験用に、昨年こちらのヘッドマウントディスプレイ(HMD)を導入しました。発色が良く、とても綺麗に見えるので満足しているのですが、ARでの利用においては一つ問題があります。それは、当然といえば当然のことなのですがARに必要不可欠なカメラを取り付けるマウントがないということです。幸いながら当研究室には三次元プリンタがありますので、これを利用して独自マウントを設計してみよう!ということで、カメラとセンサを搭載できるマウントを作成してみました。せっかく独自に作るのだから、スマートな見栄えも意識して、HMDに引っ掛けるだけで固定できるようなマウントの設計を目標としました。続きでは、図面も3Dデータも提供されていない製品にぴったりとフィットするマウントを如何に設計したかご説明します。

図面も形状データも提供されていない製品のマウントを設計するために、リバース・エンジニアリングと称される手法を試みました。リバース・エンジニアリングとは何かと言いますと、製品などの三次元形状データを取得し、それをもとにCADデータを作成する手法のことを指します。これに倣って、まずHMDの三次元形状データを取得するため、写真からの三次元復元、Kinectを使った三次元形状取得、据え置き型3DスキャナVIVID 910を使った三次元形状取得の3つの手法を試してみて、今回の用途に最も適した手法を探ることとしました。以下がそれぞれの手法により得られたHMDの三次元形状です。左から順に写真、Kinect、据え置き型3Dスキャナを利用しています。

見比べてみると、それぞれの手法の特徴が伺えます。まず写真を利用した手法では、基本的に模様のないのっぺりとした面では特徴をつかめず復元できないため、見ていただいて分かる通り縁のみが復元されています。縁だけしっかり復元されていれば用途によっては使えますが、このHMDは微妙な曲面で形成されているので今回の用途には向かないようです。また、写真から復元する場合にはスケールが不明になってしまうため、ある点とある点の長さを手動で与えてスケールを合わせることとなります。そのため、製品の一部の長さが測定しやすいような、エッジが立っているモノの方が適していると考えられます。

次に、Kinectによる形状データを見ますと、先ほどとはうってかわって全体の形状が得られていることが分かります。また、Kienctではスケールの情報も得ることができますので、この形状データはほぼ実寸であると言えます。しかしながら、Kinectの解像度の低さからか、エッジ部が丸くなってしまいがちで、HMDに引っ掛けるようなマウントを設計することを考えれば、これも今回の用途を満足するにはあと一歩といったところでしょうか。

最後に試したのが、据え置き型3Dスキャナです。これはさすがと言いますか、曲面部・エッジ部ともにきれいに形状が得られているのが確認できます。実際には、このHMDの半光沢なマテリアルのせいか、うまく形状を取得するのには手こずったのですが、結果としては正確なデータを得ることができました。他の手法と異なり、手軽さや携帯性などには欠ける手法ですが、やはりその分精度は高いと言えます。今回はこちらの形状データを利用してマウントを設計することとしました。

設計にはBlenderを利用しました。当研究室ではよくArchiCADのGDLを利用しているのですが、今回のような用途にはパラメトリックに制御可能なモデラよりも手作業でポリゴンを変形させていけるようなモデラの方が便利そうです。今回はまず、上の左側の図のように、3Dスキャナで取得した形状データに被らないように多少の余裕を見ながら、手作業ですこしずつHMDの曲面形状に沿ったポリゴンを張っていきました。次に、張ったポリゴンに厚みを持たせ、カメラとセンサを搭載するマウントの設計をします。厚みはBlenderのModifierのSolidifyを利用し、5mm厚に設定しました。そして、中央図のように、パラメトリックにモデリングしたカメラ、センサの形状データを利用して、マウントとのブール演算を行うことで、カメラとセンサの収まりを設計しました。これらの作業において特に注意したのは、HMD・カメラ・センサのサイズとマウントの遊びのサイズです。3Dプリンタでは1パスの太さ/厚みが決まっているため、それを考慮した遊びを設計してやらなければ、うまく収まらないということが多々起こります。また、ケーブルの収まりも重要なこと設計要件と言えます。カメラケーブルがしなりやすくなるところまでの長さを、カメラモデルの後ろに柱状体として表し、これが装着時に頭に接触しないような設計としました。このように収まりを数値/視覚的に検討しながらできあがったのが、右図のようなマウントです。

カメラの両眼視差は人間の目の幅の平均の65mmとし、HMDとマウントは側面のツルの部分に下から引っ掛け、おでこのところに上から引っ掛かるような設計になっています。また、中央部にセンサが搭載できるようにしてあります。

HMDへのマウントの装着はこの三枚の写真の通りに行います。まずツルに引っ掛けて、それを前にスライドさせていくことでしっかりと固定することが可能です。

長くなりましたが、以上が今回のマウント制作における手順の説明になります。なかなか手間がかかるとは言え、オリジナルなものができたときの感動は代えがたいものですね。昨今では3Dプリンタ/スキャナともに廉価なものが登場しつつあるので、今後はより手軽にこういった物が作れる時代になりそうです。また何か面白いものをつくったときはこちらでご紹介させて頂きます。

以下のコメントは、その投稿者が所有するものでサイト管理者はコメントに関する責任を負いません。